名前のない定理

マニアックな数学

自由研究 ヒルベルトの数論報告を読む #4

続いて代数的整数の定義がなされます.代数的数が代数的整数,もしくは整数であるとは,以下の形式 ,ここでは有理整数,を満足することである.具体例:は代数的整数である.なぜならからとなり となるから.これに続いて三つの定理が示されます.定理2:任意の整数整…

円分多項式が既約であることのクロネッカーによる証明

を奇素数とするとき,円分多項式は整数多項式として既約です.これはアイゼンシュタインの既約判定法を使って証明するのが一般的です.今日はクロネッカーによる既約性の証明を紹介します.をの乗根とすると,円分多項式はを根に持ちます.次の補題を証明します.補…

自由研究 ヒルベルトの数論報告を読む #3

前回の記事で体の生成元,および共役数を定義しました.しかしこの定義には一つ問題があります.を有理数体の代数拡大とし,を体の生成元とします.の次数をとします.ヒルベルトは体の数の共役数を次のように定義したのでした.数を有理数を用いて と表し,の共役数…

自由研究 ヒルベルトの数論報告を読む #2

前回の記事で代数的数,体の生成元などの定義をしました.数論報告は次に共役数,共役体の定義をします.数を体の生成元とします. 以下翻訳.ドイツ語は全部独学なので間違いも多いかと思いますがご了承ください. 数が満足する最低次有理係数等式の次数を体の次数…

自由研究 ヒルベルトの数論報告を読む #1

ヒルベルトの数論報告を読んでいきます.まず代数的数,体の定義をしています.最初に出てくる定理を見てみましょう.定理1:任意の体(ここでは有理数体の有限次拡大)について,体のすべての数がの有理数係数多項式であらわされるような数が存在する.今日はこれ…

ハミルトンヤコビ方程式を用いてアトウッドの問題を解く

この文章はyoutubeと連動しています.ハミルトンヤコビ方程式を用いてアトウッドの滑車の運動を決定していきましょう.質量の異なる二つのおもりを滑車に連結させます.をおもりの質量とします.重力加速度をとします. として,一般化座標をが降下した距離としま…

挑戦!フェルマーの最終定理1-2-14 複素数の極形式2

前回,複素数の偏角を導入しました.今回は複素数の積と偏角の関係について見ていきましょう. 次の定理から始めましょう.定理1:証明:左辺を展開します. 実部と虚部をまとめると 三角関数の加法定理から となり証明できました.二つの複素数を極形式に表して, …

挑戦!フェルマーの最終定理 1-2-13 複素数の極形式1

今回目標にする定理は次のものになります.これは複素数を別の方法で表現することにつながります.二つの実数が与えられたとき,正の実数と角を用いて と書ける.証明:とすれば, が成り立つ.これは二つの実数が単位円状にあることを意味する. よってある角度を用…

謎の数学1 平方剰余記号のある種の総和2

前回の記事でを素数,をで割り切れない整数とするとき, が成り立つことを示しました.今回はこの続きです.集合をの平方剰余の集合,を平方非剰余の集合とします.をで割り切れない互いに非合同な任意の整数とします.さらにをとなる剰余の集合, をとなる剰余の集…

謎の数学1 平方剰余記号のある種の総和1

を素数とします.次の総和を考えます. として計算してみましょう. で総和はになります.実は次の定理が成り立ちます.おそらく既知のものだとは思いますが,私はこれを自力で発見しました.定理1: 今回はこれを目標にしましょう.これを示すためにまずは次の補題を…

大学では教えてくれない数学 ガウス和とガウステーブル6

今回の目標は以下の定理になります. 定理1:を素数とし,整数をなるものとする.合同方程式のでない本質的に異なる解の個数はに近く,その誤差はで抑えられる.証明のために以前の記事の記号を用います.ここでおさらいしておきましょう. ガウス和とガウステーブル…

大学では教えてくれない数学 ガウス和とガウステーブル5

第一回 box-white.hatenablog.com 前回 box-white.hatenablog.com前回の記事では型の素数についての結果をガウス和を用いて解釈しなおしました.今回は型の素数について考察していきます.まずは次の定理を目標にします.定理1:の素数とすると,二つの自然数が存…

大学では教えてくれない数学 ガウス和とガウステーブル4

第一回 box-white.hatenablog.com 前回 box-white.hatenablog.com今まで3で割って1余る素数についていろいろ見てきました.次は4で割って1余る素数を考察していきたいのですが,3で割って1余る素数のときよりも複雑になることが予想されます.非常に技巧的な式…

大学では教えてくれない数学 ガウス和とガウステーブル3

第一回 box-white.hatenablog.com 前回 box-white.hatenablog.com前回の内容をおさらいしておきましょう.を3で割って1余る素数とし,をの原始根とする.の0以外の剰余を次の3つのグループに分ける.グループA:の指数が3で割れるもの. グループB:の指数が3で割っ…

大学では教えてくれない数学 ガウス和とガウステーブル2

第一回 box-white.hatenablog.com 今回の目標は次の定理になります.定理:を3で割って1余る素数とする.このとき整数のうち等式を成立させるものが存在する.例:証明 を3で割って1余る素数とします..による剰余を考えると,そこには原始根が存在します.(原始根…

大学では教えてくれない数学 ガウス和とガウステーブル1

今回からガウス和とガウステーブルについて書いていきたいと思います.(全六回) 次のような定理を得ることができます. 1.を3で割って1余る素数とする.()をの法に関する絶対最小剰余とすると,量は必ず平方数になる. 2.を3で割って1余る素数とする.このとき整…

代数的整数論 整基底の求め方

問題の確認 今回は整基底を実際に求める方法を書いていきます.なぜこんな記事を書こうと思ったかというと整基底を求める方法が管見の限りインターネットになかったからです.今回は有理数の有限次代数拡大ならいつでも使える方法を紹介します. まずは定義から…

代数的整数論の応用2

前回の記事でディオファントス方程式 についてに限定して考察しました.今回は一般のについて考えていきましょう. まずが偶数であるときを考察します.とすると となります.左辺は因数分解ができてとなります.にはしか共通因数がありません.そこで可能性として…

代数的整数論の応用

1850年M.Lebesgueは次のディオファントス方程式について以下のような結果を得ました. 方程式を満たす整数の組はしか存在しない. 以下でこれについて解説していきます. 証明にはガウス整数(,は整数)が一意分解整域であることを用います.これが正しいことは前…

ガウスの定理の拡張

ガウスの定理を拡張しました. drive.google.com

多項式におけるガウスの定理

早速ですが問題です. を二つの正の整数とするとき方程式 は正の根をちょうど一つだけ持つ. さあ、みんなで考えよう. 今回紹介するGauss の定理を使えばこの問題は一発で解けます.定理を紹介する前に多項式の「符号交代数」を定義します. 多項式の符号交代数…

4で割って1余る素数に関するガウスの定理

こんにちは。今回はガウスの発見した定理について紹介します。 で割って余る素数は二つの平方数の和で書けることをご存知でしょうか。例えば のように書けます。 これは「存在型」の定理であり具体的なとの値はわからないといわれています。しかしガウスは四…