早速ですが問題です.
を二つの正の整数とするとき方程式
は正の根をちょうど一つだけ持つ.
さあ、みんなで考えよう.
今回紹介するGauss の定理を使えばこの問題は一発で解けます.定理を紹介する前に多項式の「符号交代数」を定義します.
多項式の符号交代数とはの係数を高次の項から順番に見ていったとき,符号が何回入れ替わるかを数えたものです.例えばの場合,係数を高次のものから順番に見ていくととなるので二回符号が入れ変わっています.この場合の符号交代数はです.のように途中に係数がとなる項があるときはそれを飛ばして考えます.つまりこの場合,係数はなので符号交代数はです.
Gaussの定理とは次のようなものです.
を実数係数の多項式とする.このとき方程式の正の根の個数は多項式の符号交代数と等しいかそれより少ない.
証明は簡単なのでここでしておきましょう.多項式は複素数の世界で一次式に分解されます.つまりをある複素数として
となります.ここで因子の中からが虚数と負の実数であるものをすべて集め積を作ります.その積をとするとは実数係数の多項式になります.
としの係数を順にみていきましょう.最高次の符号は正です.の係数の符号が正から負に変わる箇所に注目します.このときとしてとできます.ここにをかけてやると,のときもそうでないときもの係数は負であることが分かります.つまりの係数が正から負に変わるときには係数の符号が負に確定する項がちょうどその場所に存在します.
同様にの係数が負から正に変わるときには係数の符号が正に確定する項がちょうどその場所に存在することもわかります.
最後の項は符号が反転します.最高次の項が正に確定することと,最後の項も係数が確定することに注意すると,この論理によっての符号が確定する項の個数はの符号が交代する箇所よりだけ多く存在します.
の符号が確定する項を降順に見ていくと,正負が交互に現れていることが分かります.間に符号が確定しない項がいくつあるかわかりませんが,符号が確定する項の間にの係数の符号は少なくとも一回交代していることになります.
これらのことを統合すると,の符号交代数はの符号交代数より少なくとも多いことになります.
これを繰り返せばの符号交代数は正の根の個数と等しいかそれより多いことが分かります.これで定理は証明されました.
初めの問題ではの符号交代数はなので,Gaussの定理より正の根は高々一つしかないことが分かります.かつなので,中間値の定理よりは少なくとも一つ正の根を持つことが分かります.以上のことから方程式は正の根をちょうど一つ持つことが示されました.