名前のない定理

マニアックな数学

ダークマターはビリアル定理の計算間違い「怪文書」

ダークマターの存在根拠に、かみの毛座銀河団の速度分布があります.
かみの毛座銀河団の速度分布から計算される運動エネルギーと,目に見える物質の位置エネルギーが
ビリアル定理の等式を満たしていないので,ダークマターが存在するという論法です.

今回私は「ビリアル定理の適用が間違っているのでダークマターは存在しない」と主張します,(トンデモ)

あるサイトによると,ビリアル定理を適用する際,位置エネルギーの計算方法は,銀河同士の位置エネルギー
だけを考慮しているみたいです.私はここで恒星が恒星の形を保つために必要なエネルギーをカウントしていないことに気付きました.

恒星自身の位置エネルギーを計算に入れてかみの毛座銀河団の位置エネルギーのオーダーを見積もってみます.

かみの毛座銀河団の質量をMとします.今恒星がすべて太陽と同じ質量と半径を持つと仮定します.
太陽の質量をM_0とすると,恒星の数はM/M_0と見積もることができます.太陽の半径をR_0とします.

太陽自身が持つ位置エネルギーを大雑把に\frac{GM_0^2}{R_0}とします.M_0が2\times10^{30}kgで,半径が7\times10^8 mなので,万有引力定数を7 \times 10^{-11}として,
位置エネルギーはおおよそ10^{41}です.

かみの毛座銀河団の質量は10^{13} M_0らしいので(ダークマター抜き),恒星の位置エネルギーの総和のオーダーは10^{54}です.かみの毛座銀河団の運動エネルギーは
10^{43} \times {10^6}^2 = 10^{55}のオーダーです.近いですね.

恒星の中には太陽よりも密度の高いものもあるみたいなので,このエネルギーを無視するのはよくないと思います.(怪文書終わり)

証明の技法 7 無理数の示し方

今回の証明の技法はある数が無理数であることを示すテクニックです.

背理法を使って次の事実

「0より大きく1より小さい整数は存在しない」

と矛盾する結果を導くというのが今回証明する技法です.

例題:ネイピア数eが無理数であることを示せ.

解答:e = 1 + \dfrac{1}{1!} + \dfrac{1}{2!} + \dfrac{1}{3!} + \cdotsが成り立ちます.ここである整数p,qを用いてe = q/pだったとします.

両辺にp!を掛けると,
(p-1)! q = p! + \dfrac{p!}{1!} + \cdots + \dfrac{p!}{p!} + \dfrac{p!}{(p+1)!} + \cdots
となります.ここで左辺は明らかに整数で,右辺の\dfrac{p!}{p!}より前にある数もすべて整数になります.従って
 ( p-1)!q - \left \{ p! + \dfrac{p!}{1!} + \cdots + \dfrac{p!}{p!} \right \} = \dfrac{p!}{(p+1)!} + \cdots
となります.

右辺を評価しましょう.これは明らかに正の数になります.また\dfrac{p!}{(p+n)!} < \dfrac{1}{(p+1)^n}より
右辺は\dfrac{1}{(p+1)} + \dfrac{1}{(p+1)^2} + \cdots
で押さえられます.等比級数の公式を使うとこれは
 \dfrac{1}{p}となります.これは1より小さいので
右辺は0より大きく1より小さいことが分かりました.

ところが左辺は整数だったのでこれは矛盾です.よってネイピア数eは無理数であることが分かりました.(証明終わり)

円周率\piも,背理法を用いて0より大きく1より小さな整数を構成することで無理数であることが示せます.

証明の技法 6 関数等式の示し方

今回は関数等式の示し方を深堀していきます.

二つの有理形関数f(z),g(z)が等しいことを示すテクニックとして,

Step1,新しく関数f(z)-g(z),もしくはf(z)/g(z)を作る.

Step2-A,その関数が複素平面で有界であることを示す.ここからリウヴィルの定理より,新しい関数が定数関数であることが分かる.
Step2-B,新しい関数が正則であることを示した後,背理法により定数関数であることを示す.具体的には定数関数でないと仮定して,ある領域の内部で最大の絶対値を持つことを示す.これにより矛盾が示されその関数が定数関数であることが示される.

Step3,定数を定めるために具体的なzの値を代入する.

というものがあります.

具体例を見てみましょう.以下の例はカールジーゲル解析的整数論 II 岩波書店から抜粋しました.

関数g(z),\eta(z)をそれぞれ
g(z) = e^{\frac{\pi i z}{12} } \sum_{n = -\infty}^{\infty}(-1)^n e^{\pi i z(3 n^2 + n)}
\eta(z) = e^{\frac{\pi i z}{12}} \prod_{n=1}^{\infty}(1-e^{2 \pi i n z})
とします.ここでzは上半平面のみを動きます.g(z) = \eta(z)であることを示しましょう.

ここで
g(z+1) = e^{\frac{\pi i }{12}} g(z)
g\left( - \dfrac{1}{z} \right) = \sqrt{ \dfrac{z}{i} } g(z)
\eta(z+1) = e^{\frac{\pi i}{12}} \eta(z)
\eta \left( -\dfrac{1}{z} \right) = \sqrt{\dfrac{z}{i}} \eta(z)
g(z),\eta(z)は上半平面で正則.
であることが証明されているとします.ただし平方根はz = iのとき1になる分枝とします.

今\eta(z) \neq 0が上半平面で成り立ちます.ここで新しく関数k(z)を
k(z) = \dfrac{ \eta(z) - g(z)}{\eta(z)}とします.
この関数はモジュラー変換で不変です.よってk(z)が取りうる値は基本領域Fの中ですべて登場します.

k(z)はk(z) = \dfrac{ 1 + A - 1 -B}{1 + A}と書けます.ここでA,Bはe^{2 \pi i z}などの和になります.従って基本領域の中で虚部を無限大にもっていくとk(z)は0に行きます.

今k(z)が虚部を無限大に飛ばすと0に収束することから,実軸に平行な直線で基本領域を切り取り,そのなかでk(z)の絶対値が最大になるようにできます.この領域をCとします.複素関数論の知識から|k(z)|は領域Cの境界上で最大値を取ります.最大値を取る点をz_0とすると,モジュラー性より関数k(z)はz_0を中心とする小円盤の内部で最大値を取ります.小円盤という領域の内部で最大値を取ることより,k(z)が定数関数であることが示せました.

基本領域の中で虚部を無限大に飛ばすと0に行くので,この定数は0でないといけません.これでg(z) = \eta(z)が示せました.(証明終わり)

楕円関数がワイエルシュトラスのぺー関数とその導関数の有理関数で表現できることを示すのにも使われます.

ウィルソンの定理の再解釈

pを奇素数とします.このときウィルソンの定理
(p-1)! \equiv -1 \pmod{p}
が成り立ちます.これを今日は新しい視点で見ていきます.

\sum_{X = 0}^{p-1} X^k はkがp-1の倍数のとき\equiv -1 \pmod{p},そうでないとき\equiv 0 \pmod{p}となります.ここで多項式
(X-1)(X-2) \cdots (X-(p-1))
を考えましょう.

これを展開するとp-1次の多項式になります.ここで展開したXに0,1,\ldots,p-1を代入していき,総和を取れば上で述べたことから,法pで考えると,生き残るのはX^{p-1}の項のみになり,それは-1になります.

一方展開する前の多項式に0,1,\ldots,p-1を代入すれば,X = 0のときのみ0でない値を取ることが分かります.pが奇素数のとき,これは(p-1)!になります.従って(p-1)! \equiv -1 \pmod{p}になります.

証明の技法 5 恒等式 ac-bd = (a-b)c + b(c-d)

今回の技法は恒等式ac-bd = (a-b)c + b(c-d)です.この式の正しさは右辺を展開すればすぐわかります.この式はa-b,c-dそれぞれに意味があるときに使えます.

例題:nを2以上の正の整数とする.整数a,b,c,dについて,a-b,c-dがそれぞれnの倍数であるとする.このときac-bdがnの倍数であることを示せ.

解答:恒等式よりac-bd = (a-b)c + b(c-d)である.ここでa-b,c-dがnの倍数であるから,ac-bdがnの倍数であることが分かる.(証明終わり)

積の微分法則f(x)g(x)の微分がf'(x)g(x) + f(x)g'(x)であることも同じようにして示せます.これもf(x+h)-f(x)とg(x+h)-g(x)それぞれに意味があります.

証明の技法 #4 イプシロンエヌ論法のテクニック

今回のテクニックはイプシロンエヌ論法に関係するテクニックです.
ある極限の存在が与えられたとき,別の極限を導くテクニックです.
キーワードは「大きなN,さらに大」です.

問題  \lim_{n \to \infty} 2 a_{n+1} - a_{n} = 0のとき \lim_{n \to \infty} a_n = 0を示せ.

解答 任意に与えられた正の数\varepsilonに対して,自然数Nが存在して,n \geq Nに対して
 |2a_{n+1} - a_{n} | < \varepsilon
が成り立つ.
式変形をするとn \geq Nのとき
 - \varepsilon < 2a_{n+1} - a_{n} < \varepsilon
となる.ここから
 - \dfrac{\varepsilon}{2} + \dfrac{a_{n}}{2} < a_{n+1} < \dfrac{\varepsilon}{2} + \dfrac{a_n}{2}
となる.これら一連の不等式からnを
 - \dfrac{\varepsilon}{2} - \dfrac{\varepsilon}{4} - \cdots  - \dfrac{\varepsilon}{2^{n-N}} + \dfrac{a_N}{2^{n-N}} < a_{n} < \dfrac{\varepsilon}{2} + \cdots + \dfrac{\varepsilon}{2^{n-N}} + \dfrac{a_N}{2^{n-N}}
と表せる.\varepsilonの項を不等式で評価すると,\varepsilonで押さえれられる.さらに自然数N'を十分大きく取るとn \geq N'に対して
 -\varepsilon < \dfrac{a_N}{2^{n-N}} < \varepsilon
とできる.ここでNがnに対して固定されていることを使った.従って
 -2 \varepsilon < a_{n} < 2 \varepsilon
が充分大きなn \geq N'に対して成り立つ.よって\lim_{n \to \infty} a_n = 0が成り立つ.(証明終わり)

今回の技法はある極限が与えられたとき,別の極限を計算する際に用いるものです.前提となる極限に関する自然数Nを取って,そこからさらに大きなnを考えていくという考え方がポイントになります.このときNを固定した自然数と考えられることがポイントです.

類題として
\lim_{n \to \infty} a_n = \alphaのとき \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_1 + a_2 + \cdots + a_{n}}{n} = \alphaを示せ.
があります.

代数幾何学分からん2

上野先生の「代数幾何学」を読んでいてわからない部分がありました.自己解決しました.もしかしたら他の人の役に立つかもしれないと思い,ここに書き残しておきます.


第四章 章末の問題4.4(1)について

\mathcal{A}加群の層の全射準同型写像f \mathcal{B} \rightarrow \mathcal{E}があり,\mathcal{B}が有限生成\mathcal{A}加群であれば,\mathcal{E}が有限生成\mathcal{A}加群であることを示す問題です.

解答を見たところXの任意の点xにおいて開集合Uが存在して,\mathcal{A}^{n}|U \rightarrow \mathcal{B}|Uが全射で\mathcal{B}|U \rightarrow \mathcal{E}|Uが全射なのでこれを組み合わせて,\mathcal{E}が有限生成\mathcal{A}加群であることを得る.と書かれていました.

私は\mathcal{B} \rightarrow \mathcal{E}が全射でも,\Gamma(\mathcal{B},U) \rightarrow \Gamma(\mathcal{E},U)は全射とは限らないので,これは言えないのではないかと考えました.この考えは間違いであると後でわかりました.

自己解決

有限生成における全射の定義を間違えて理解していました.有限生成\mathcal{A}の定義における全射は層の全射であり,\Gamma(\mathcal{B},U)は関係ありません.\mathcal{B}|U間の写像の全射性はあくまで「層の全射」であることが分かっていませんでした.\mathcal{B}|Uと\Gamma(\mathcal{B},U)について前者は層ですが,後者は加群であるという区別がついていませんでした.

やっぱり独学は厳しい