名前のない定理

マニアックな数学

作用幾何学入門1

作用幾何学について解説します.

ガウスは三次元空間内の二点a,bを通る直線を「a,bを固定するような変換の下で不変な点の集合」と定義したそうです.a,bを固定するような合同変換はa,bを通る軸の周りの回転だけになり,それで不変な点は確かにa,bを通る直線になります.

このことに範をとり,群が集合上に作用しているとき,集合上に直線を書くことができそうです.早速定義をしていきましょう.

この文章では一貫して群Gが集合Mに作用しているとする.また群Gの元はギリシャ文字で,集合Mの元はラテン文字を用いて表すことにする.

定義1a,b \in Mに対し,Gの部分群G(a,b)a,bの両方を固定するGの元全体の集合とする.
定義2 a,b \in Mに対しMの部分集合L(a,b)を,任意のG(a,b)の変換で不変なMの元の集合とする.これをa,bを通る直線と言い表す.
定理3a,b,c,d \in Mについて,c \in L(a,b) ,d \in L(a,b)ならばG(c,d) \supseteq G(a,b)
(証明) \alpha \in G(a,b)ならばc ,d \in L(a,b)より \alpha(c) = c , \alpha(d) = d.よって\alpha \in G(c,d)(証明終わり)
定理4a,b,c,d,e \in Mについて,c \in L(a,b) , d \in L(a,b ) , e \in L(c,d)ならばe \in L(a,b)
(証明)定理3よりG(c,d) \supseteq G(a,b).従ってL(c,d) \subseteq L(a,b)より定理が言える.(証明終わり)
定理5 \gamma \in G,a,b \in Mとする.このとき集合G(a,b)G(\gamma(a),\gamma(b))の間には全単射があり,その対応は\alpha \in G(a,b)に対して\gamma \alpha \gamma^{-1}を対応させることで得られる.
(証明)\alpha \in G(a,b)とすると(\gamma \alpha \gamma^{-1})(\gamma(a)) = \gamma(a),(\gamma \alpha \gamma^{-1} ( \gamma(b)) = \gamma(b)より,\gamma \alpha \gamma^{-1} \in G(\gamma(a),\gamma(b))が言える.
\gamma \alpha_1 \gamma^{-1} = \gamma \alpha_2 \gamma^{-1}なら\alpha_1 = \alpha_2ゆえに単射性が言える.
\beta \in G(\gamma(a),\gamma(b))とすると,\gamma^{-1} \beta \gamma \in G(a,b)が容易に分かる.よって\alpha \in G(a,b)が存在し,\beta = \gamma \alpha \gamma^{-1}が言える.これで写像全射性が言えた.(証明終わり)

定理6\gamma \in G,a,b \in Mとする.このとき集合L(a,b)と集合L(\gamma(a),\gamma(b))の間には全単射があり,その対応はc \in L(a,b)に対して\gamma(c)を対応させることで得られる.
(証明)定理5より任意の\beta \in G(\gamma(a),\gamma(b))に対して\alpha \in G(a,b)が存在して\beta = \gamma \alpha \gamma^{-1}となる.このとき\beta(\gamma(c)) =(\gamma \alpha \gamma^{-1})(\gamma(c)) =\gamma(c)が言える.ここでc \in L(a,b)であることを用いた.従って\gamma(c) \in L(\gamma(a),\gamma(b))であることが言える.単射性は群の作用より証明できる.c' \in L(\gamma(a),\gamma(b))に対して\gamma^{-1}(c)L(a,b)の元であることが言える.これより全射性が言える.(証明終わり)

長くなったので記事を分割します.これから中点,球,平行移動について定義し,その性質を見ていきたいと思います.

(この文章はフィクションです.作用幾何学という分野は存在しません.)