前回,複素数の偏角を導入しました.今回は複素数の積と偏角の関係について見ていきましょう.
次の定理から始めましょう.
定理1:
証明:左辺を展開します.
実部と虚部をまとめると
三角関数の加法定理から
となり証明できました.
二つの複素数を極形式に表して,
とします.このとき定理1から次の式が成り立ちます.
定理2:
この式からの偏角はに等しいことが分かり,
の偏角はの偏角との偏角の和であることが言えます.
またの動径はに等しいことが分かり,
の動径はの動径との動径の積であることが言えます.
実例でみておきましょう.
とします.動径と偏角はそれぞれ
となります.
とします.複素数の積の定義に従って計算すると
となり,
となります.このとき確かに,およびが成り立ちます.