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ハミルトンヤコビ方程式を用いてアトウッドの滑車の運動を決定していきましょう.
質量の異なる二つのおもりを滑車に連結させます.をおもりの質量とします.重力加速度をとします.
として,一般化座標をが降下した距離とします.
このときラグランジアンは運動エネルギーと位置エネルギーの差なので,
となります.正準運動量は次のようにして求まります.
ここで偏微分はラグランジアンをとを独立変数としてみなしたときのものです.これを計算すると
となります.ハミルトニアンはなので
となります.
これから行う作業を先に概観しておきましょう.
1.ハミルトンヤコビ方程式
を立てる.
2.方程式を解く.このとき積分定数が現れ,となる.
3.では定数なのでこの式から運動を求める.
の3stepになります.
なぜこれで問題が解けるのか解説しておきます.ハミルトニアンに対して二つの方程式
が成り立ちます.この方程式の形を変えないように新しい変数を作ることを正準変換というのでした.
正準変換の中で上記方程式が簡単になるものを求めることを考えましょう.一番簡単なのはハミルトニアンが定数になることです.もしハミルトニアンが定数になれば新変数は時間に対して不変な定数になります.新変数を用いて旧変数を表せば問題が解けたことになります.
さて正準変換を生成する方法に母関数を用いるものがあります.の母関数を用いて正準変換を作り出し,うまいことハミルトニアンが恒等的ににできたとしましょう.このとき
が成り立ちます.なのでが成り立つわけです.
この方程式を解き,積分定数を使ってという解が得られたとします.積分定数を新変数として採用し,旧変数との関係を求めてやれば運動方程式が解けることになります.
ここで立ち止まって考えてみましょう.なぜ積分定数を新変数として採用するのでしょうか?
例えば質量を新変数として採用したときのことを考えましょう.このとき旧変数となります.質量が一般化座標と正準運動量の関数として書けることになります.これは不都合なことです.
正準方程式はですが,ここには当たり前すぎて省略された方程式群
などが隠されているわけです.これらをすべて含めたものが正準方程式なわけです.もし質量がの関数として書けたとするとこの関係が崩壊し,正準方程式が変わってきます.それゆえ質量などのもとから存在したものは新変数として採用できないのです.
それでは積分定数と一般化座標を混ぜたものなどを新変数として採用できないのでしょうか?ハミルトンヤコビ方程式を解いた結果となったとしましょう.このとき積分定数の意味から
が成立しています.ここで偏微分はを固定してに対して偏微分を行うという記号です.などとすると
となりせっかく解いたハミルトンヤコビ方程式が成立しなくなります.逆にとすると偏微分の関係が保存されうまくいくことが分かります.
長々と説明しましたがアトウッドの問題を解いていきましょう.
なのでハミルトンヤコビ方程式は
となります.
の形を持つことを仮定して方程式を解きましょう.
このときとなります.平方根をとると
これを解けばとなります.
と関係式より
では時間に依存しない定数です.この式をについて解くと
,ここではある定数,となってアトウッドの問題が解けました.