名前のない定理

マニアックな数学

大学では教えてくれない数学 ガウス和とガウステーブル5

第一回
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前回
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前回の記事では3n+1型の素数についての結果をガウス和を用いて解釈しなおしました.今回は4n+1型の素数について考察していきます.まずは次の定理を目標にします.

定理1:p = 4n+1素数とすると,二つの自然数a,bが存在し,a^2 + b^2 = p

4n+1型の素数8n+1型の素数8n+5型の素数の二つがあります.この二つは-1が異なるグループに属することになるので場合分けが必要です.まずは8n+1型の素数について見ていきましょう.

p = 8n+1素数とします.以前の通りgを法pに関する原始根とします.さらにpの最小剰余を次の4つのグループに分割します.剰余を原始根gのベキで表現したとき,その指数が4で割り切れる剰余の集合を(0),その指数が4で割って1余る剰余の集合を(1),などとします.さらにa \in (i)かつa + 1 \in (j)なる剰余aの個数を(i,j)で表します.

-1 \in (0)であるため(i,j)は合同方程式1 + \alpha_{i} + \alpha_{j} \equiv 0 \pmod{p} ,\alpha_{i} \in (i) , \alpha_{j} \in (j)の解の個数です.対称性から(i,j) = (j,i)が言えます.\alpha_{i} \in (i) , \alpha_{4-i} \in (4-i)のとき\alpha_{i} \alpha_{4-i} \in (0)です.
1 + \alpha_{i} + \alpha_{j} \equiv 0 \pmod{p}, \alpha_{i} \in (i) , \alpha_{j} \in (j)\alpha_{i}^{-1} \in (4-i)を乗じると,方程式は\alpha_{4-i} + 1 + \alpha_{4-i + j} \equiv 0 \pmod{p},\alpha_{4-i} \in (4-i), \alpha_{4-i + j} \in (4-i + j)に移行します.逆向きの変換も可能なのでこれら二つの合同方程式の解の個数は等しく,ここから(i,j) = (4-i,4-i+j)が言えます.

この二つの事実(i,j) = (j,i) , (i,j) = (4-i,4-i+j)を用いるとガウステーブルは以下のようになります.
 \begin{pmatrix}
  h & i & k & l \\
  i & l & m & m \\
  k & m & k & m \\
  l & m & m & i
\end{pmatrix}
第二行の総和は(1)の個数に等しいので,i + l +2m = 2nが言えます.第三行,第四行の総和もそれぞれ2nに等しいことが分かります.第一行の総和は-1 \in (0)であるので2n-1に等しく,これらをまとめると次のようになります.
 \left \{
  \begin{array}{l}
    h + i + k + l = 2n-1 \\
    i + l + 2m = 2n \\
   2k+2m = 2n \\
   l + 2m + i = 2n
  \end{array} \right.
第一の式と第二の式を見比べることでh + k = 2m -1が得られ,第三の式と第四の式を見比べることで2k = l + iが得られます.

前回のガウス和の考察をここで用います.\eta^4 = 1なる複素数とすると,S = \sum_{\alpha = 0}^{3} \sum_{\beta = 0}^{3} (\alpha,\beta) \eta^{\alpha + \beta}の絶対値はp^{0.5}に等しいことが言えます.
S = (h + 2m + k) + (2i + 2m) \eta - (2k + l + i) - (2l+2m)\eta \\= (h + 2m -k - l -i) + (2i -2l)\eta
です.
l + i = 2kからh + 2m - k - l -i = h + 2m - 3kとなり,h = 2m - 1-kからh + 2m - 3k = 4m - 4k -1となります.
以上のことをまとめると,S = (4m-4k - 1) + (2i - 2l)\etaとなります.Sの絶対値の二乗はpに等しいのでここから
(4m-4k -1)^2 + (2i - 2l)^2 = pが言えます.

8n+5型の素数も同様の議論が成立し,p = a^2 + b^2となるa,b \in \mathbb{Z}が存在することが言えました.

次は
定理2:p = a^2 + b^2となる整数a,bは二項係数から計算が可能である.
を目標にしましょう.再びp = 8n+1とします.

a = 4k - 4m + 1, b = 2i -2lとすると,今までに得られた等式からh,i,k,l,mp,a,bで表現することができ,
 \left \{ 
  \begin{array}{l}
    16 h = p - 6a -11 \\ 
    16i = p + 2a - 4b -3 \\
    16k = p + 2a -3 \\
    16l = p + 2a + 4b - 3 \\
     16 m = p -2a + 1
  \end{array}
 \right.
となります.

さて\dfrac{1}{4}(p-1) = \lambdaとして,和F = \sum_{x=1}^{p-1}(x^4 + 1)^{2\lambda}の剰余を考えましょう.これはF \equiv -2 - \binom{2 \lambda}{\lambda} \pmod{p}となります.一方(x^4 + 1)^{2\lambda}x^4 + 1 \in (0)もしくはx^4 + 1 \in (2)ならば+1と合同であり,x^4 + 1 \in(1)もしくはx^4 + 1 \in (3)なら-1と合同であることが言えます.x^4 \in (0)ですので,和FF \equiv (00) -(01) + (02) - (03)となります.これに上式を代入すると,F \equiv -2 - 2aとなります.両者を等置して 2a \equiv \binom{2 \lambda}{\lambda} \pmod{p}が言えました.

p > 16ならば2 \sqrt{p} < \dfrac{p}{2}が成り立ちます.p = a^2 + b^2 \geq a^2からa \leq \sqrt{p},すなわち2a \leq 2 \sqrt{p} \leq \dfrac{p}{2}となります.よって\binom{2 \lambda}{\lambda}の絶対最小剰余をP_{1}とすると,合同式2a \equiv \binom{2\lambda}{\lambda} \pmod{p}は剰余を取り払っても成立し,2a = P_{1}が成り立ちます.

p = 8n + 5の場合もこれと同様の議論が展開でき,定理
定理2:p = a^2 + b^2となる整数a,bは二項係数から計算が可能である.
を得ることができました.

次回
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