名前のない定理

マニアックな数学

謎の数学1 平方剰余記号のある種の総和2

前回の記事でp素数,apで割り切れない整数とするとき,
\sum_{x = 0}^{p-1} \left( \dfrac{x^2 + a}{p} \right) = -1
が成り立つことを示しました.今回はこの続きです.

集合Apの平方剰余の集合,Bを平方非剰余の集合とします.k,lpで割り切れない互いに非合同な任意の整数とします.

さらにC_{00}x \in A,x + k\in A , x + l \in Aとなる剰余xの集合,
C_{01} x \in A , x + k \in A , x + l\in Bとなる剰余xの集合,
C_{10}x \in A , x + k\in B , x + l \in Aとなる剰余xの集合,
C_{11}x \in A, x + k \in B , x + l \in Bとなる剰余xの集合とします.

そしてそれぞれの個数を小文字であらわして,例えばc_{00}などと表わします.

今回の目標は次の定理になります.
定理1:c_{01}c_{10}の差の絶対値は1を超えない.

証明のためさらに四つの集合を定義します.
Ex \in A, x + k \equiv 0 ,x+l \in Aとなる剰余xの集合,
Fx \in A,x+k \equiv 0 , x + l \in Bとなる剰余xの集合,
Gx \in A, x + l \equiv 0 , x + k \in Aとなる剰余xの集合,
Hx \in A, x + l \equiv 0 , x + k \in Bとなる剰余xの集合とします.
これらの集合の元の個数もそれぞれ小文字であらわします.

証明:
\sum_{x = 0}^{p-1} \left( \dfrac{x^2 + k}{p} \right) = \left( \dfrac{k}{p} \right) + \sum_{x = 1}^{p-1} \left( \dfrac{x^2 + k}{p} \right)
x^2,x\neq 0は八つの集合C_{00},C_{01},C_{10},C_{11},E,F,G,Hのいずれかに所属し,これらの集合は共通部分を持たない.
x^2 \in C_{00}なら \left( \dfrac{x^2 + k}{p} \right) = +1などから,この和は
\left( \dfrac{k}{p} \right) + 2(c_{00} + c_{01} - c_{10} - c_{11}) +2 ( g-h)= -1となる.
\sum_{x=0}^{p-1} \left( \dfrac{x^2 + l}{p} \right) = -1から同様に
\left( \dfrac{l}{p} \right) + 2(c_{00} - c_{01} + c_{10} -c_{11}) + 2(e-f) = -1となる.
これらの式の差をとると
\left(\dfrac{k}{p} \right) - \left( \dfrac{l}{p} \right) + 4(c_{01}-c_{10}) + 2(g-h) - 2(e-f) = 0
となる.ここでg,hは大きくても1でどちらか一方が1なら他方は0であるので,
2(g-h)-2 \leq 2(g-h) \leq +2である.同様に-2 \leq 2 ( e-f) \leq 2である.
従って, -6 \leq 4(c_{01}-c_{10}) \leq 6となるがc_{01}-c_{10}は整数なので
c_{01}-c_{10}-1,0,1のいずれかの値を取ることが示せた.(証明終わり)