今回の目標は以下の定理になります.
定理1:を素数とし,整数をなるものとする.合同方程式のでない本質的に異なる解の個数はに近く,その誤差はで抑えられる.
証明のために以前の記事の記号を用います.ここでおさらいしておきましょう.
ガウス和とガウステーブル第一回
box-white.hatenablog.com
前回
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の原始根をとする.
に関する剰余の集合を,
の集合を,
の集合をとする.
このときで割って余る素数について
が成立する.ただしはを満たす整数の一組とする.
定理の証明に入る前に「本質的に異なる解の個数」を正確に定義します.二組の解に対してある自然数が存在して,となるときとは同値であると定義します.同値にならないような解の個数を「本質的に異なる解の個数」と言うことにします.
ここまでの準備の下で定理を証明していきましょう.
証明:のとき
となる解の個数を数える.合同式はと変形される.ここでである. 条件付き合同式の個の解の一つ一つに対し 9つの本質的に異なる解が存在することになる.
となる解の個数を数える.合同式はとなる.よりこれには解が存在し,本質的に異なるものは3つであることが分かる.
の場合もの場合も同様にそれぞれ3個の本質的に異なる解が存在することが分かる.
それゆえ解の個数はとなる.よってとなる.
さてであったので,となり
つまりが言える.
その他の場合も同様に計算することができ,定理を証明することができる.(証明終了)
のガウステーブルを考えると合同式の根の個数についても同様の議論ができます.
今回でガウス和とガウステーブルの連載は終了します.ガウス和の議論を用いればガウステーブルなるものはいらないのではないかと思った人も多いかもしれません.しかしガウステーブルを考えることによって今までの定理をもっと広い領域,有限体に関する定理に拡張することができます.有限体にも原始根が存在するためです.有限体においてガウス和を利用しようとすると壁にぶち当たることがすぐにわかると思います.ここでガウステーブルの議論が純粋に代数的なものであったことを想起すると,同種の議論が何も考えずに有限体に適用できることが理解できます.ここにガウステーブルの意義があると思っています.
ご高覧ありがとうございました.