名前のない定理

マニアックな数学

計量スプーンとペル方程式(数学)2

前回の記事の続きです.

box-white.hatenablog.com

半球状の計量スプーンの二等分問題を考えました.今回は一般化してN等分の問題を考えてみましょう.

前回と同じように球の半径をR,求める深さをXとすると
\int_{0}^{X} \pi (R^2 - h^2) dh = \dfrac{ \pi R^3}{3N}
が成り立ちます.これを整理してX = Rxと正規化すると
x^3 - 3x + \dfrac{2}{N} = 0
となります.

この問題の答えがロープで作図できる条件を考えてみましょう.ロープを使えば1の冪根は作図可能なので,方程式の根が1の冪根で表現されるようなNを求める問題になります.ロープを使えばもっと多様な長さが作図可能なのですが,ここでは問題を1の冪根に絞ることにします.

さて,三次方程式x^3 - 3x + \dfrac{2}{N} = 0の根が1の冪根で表現できるとき,この方程式のガロア群はアーベル群になります.クロネッカーウェーバーの定理から逆に,方程式のガロア群がアーベル群であれば根が1の冪根で表現できることが分かります.よって問題は三次方程式x^3 - 3x + \dfrac{2}{N} = 0ガロア群がアーベル群であるようなNを見つけることに変換されました.

三次方程式のガロア群は判別式を調べれば分かります.この方程式の判別式は27 \cdot 4 - 27 \cdot \dfrac{4}{N^2}でこれが有理数の平方になるとき,ガロア群はアーベル群になります.判別式を整理すると,3 \cdot \left( \dfrac{6}{N} \right)^2 \cdot (N^2 - 1) となるので,条件は3(N^2-1) = r^2となる有理数rが存在することになります.

左辺が整数なので,右辺も整数となります.従って3(N^2 - 1 ) = M^2を満たす自然数の組を探す問題に帰着できました.左辺が3の倍数なので M = 3 M'と置き,M'を改めてMと置きなおすと,N^2 - 3 M^2 = 1を満たす自然数の組を探す問題になります.ところがこれはペル方程式に他なりません.

(2 + \sqrt{3})^na_n + \sqrt{3} b_nと表したとき,(a_n,b_n)はこの方程式の解になります.よって初めの問題の答えはN = 2 , 7 , 26 ,\ldotsとなること,すなわちNがこのような自然数の場合のみ,同様の手段で解決できることが分かりました.

計量スプーンから始めてペル方程式に行きつきました.数学の意外性は底が知れません.