前回の記事の続きです.
半球状の計量スプーンの二等分問題を考えました.今回は一般化して等分の問題を考えてみましょう.
前回と同じように球の半径を,求める深さをとすると
が成り立ちます.これを整理してと正規化すると
となります.
この問題の答えがロープで作図できる条件を考えてみましょう.ロープを使えばの冪根は作図可能なので,方程式の根がの冪根で表現されるようなを求める問題になります.ロープを使えばもっと多様な長さが作図可能なのですが,ここでは問題をの冪根に絞ることにします.
さて,三次方程式の根がの冪根で表現できるとき,この方程式のガロア群はアーベル群になります.クロネッカーウェーバーの定理から逆に,方程式のガロア群がアーベル群であれば根がの冪根で表現できることが分かります.よって問題は三次方程式のガロア群がアーベル群であるようなを見つけることに変換されました.
三次方程式のガロア群は判別式を調べれば分かります.この方程式の判別式はでこれが有理数の平方になるとき,ガロア群はアーベル群になります.判別式を整理すると,となるので,条件はとなる有理数が存在することになります.
左辺が整数なので,右辺も整数となります.従ってを満たす自然数の組を探す問題に帰着できました.左辺がの倍数なのでと置き,を改めてと置きなおすと,を満たす自然数の組を探す問題になります.ところがこれはペル方程式に他なりません.
をと表したとき,はこの方程式の解になります.よって初めの問題の答えはとなること,すなわちがこのような自然数の場合のみ,同様の手段で解決できることが分かりました.
計量スプーンから始めてペル方程式に行きつきました.数学の意外性は底が知れません.