名前のない定理

マニアックな数学

はんじょうのケーキ三等分問題(数学)


皆さんはゲーム実況者として活躍されている「はんじょう」という方をご存じでしょうか.彼はある日の配信でケーキを次のように三等分することを提案しました.
hanjou1

このように三等分するには,角PNQを上手に定める必要があります.今回私はロープを使えばこの三等分が作図可能であることを証明しました.先行研究として数学ボーイZさんの「東大数学科院生がはんじょうさんによるケーキの3等分を解説します」という動画がYOUTUBEに上がっているのでそちらも参照してください.

PNQ\thetaとして表し,\thetaが満足する等式を導きます.

hanjou2

Oを円の中心とし円の半径を1とします.ケーキを三等分することは,弦PNで切り取った部分の面積が\dfrac{\pi}{3}であることを意味します.この部分は扇形PONから三角形PONを除いたものになります.よって扇形と三角形の面積を求めればよいことが分かります.

PNO\dfrac{1}{2}\thetaなので中心角PON\pi - \thetaとなります.よって扇形PONの面積は\dfrac{\pi - \theta}{2}となります.

三角形PNOの面積は底辺が2 \cos (\frac{\theta}{2} )で高さが\sin ( \frac{\theta}{2})であるので,\cos(\frac{\theta}{2})\sin(\frac{\theta}{2}) = \dfrac{1}{2} \sin (\theta)となります.

以上から切り取った部分の面積は\dfrac{\pi - \theta}{2} - \dfrac{1}{2} \sin (\theta)となります.これが三等分\dfrac{\pi}{3}と等しいことから,等号で二つを結ぶことができて,整理すると角度\theta
\dfrac{1}{2}( \sin (\theta) + \theta) - \dfrac{\pi}{6} = 0
を満たすことが分かりました.

さて弧PQと弦PQに注目します.中心角の定理から,角POQ2\thetaとなり,弧PQと弦PQの長さはそれぞれ2\theta,2\sin(\theta)となります.両者の和を取って,\thetaの関係式を使うと,弧PQと弦PQの長さの和は\dfrac{2 \pi}{3}となります.これを用いて作図していきましょう.

hanjou3

円の中心Oを作図することは既知とします.円にロープを巻き付け三等分すると,その長さは\dfrac{2\pi}{3}になります.セロハンテープ等を使い,この長さの輪を作ります.輪の一部分を円周に沿わせていき,弦がピンと張るようにします.このときの輪の両端点をP,Qとし,円弧PQの中点をMとします.中点は定規とコンパスでも作図可能です.

中点Mと円の中心Oを直線で結び,この直線と円が交わるもう一方の点をNとします.このときPNQはちょうどケーキを三等分します.(作図終わり)

コンパスと定規を用いた作図問題はよく知られていますが,そこにロープを加えるだけで面白い数学ができそうです.