名前のない定理

マニアックな数学

代数的整数論の応用

1850年M.Lebesgueは次のディオファントス方程式について以下のような結果を得ました.

 

方程式x^2 + 1 = y^n ( n \geq 3)を満たす整数の組はx = 0,y = \pm 1しか存在しない.

 

以下でこれについて解説していきます.

 

証明にはガウス整数(a + bi ,a,bは整数)が一意分解整域であることを用います.これが正しいことは前提としておきます.

 

方程式の左辺x^2 + 1(x + i)(x-i)因数分解します.ここで(x+i)(x-i)にはガウス整数域で公約数を持たないことを示します.もし(x+i)(x-i)に公約数が存在するなら,それは両者の差(x+i)-(x-i) = 2iの約数でもあります.よって公約数が存在するとしても,それは2の因子,すなわち(1+i),(1-i)のどちらかであることが分かりました.

 

(x+i)(1+i)で割り切れるとします.すると(x-i) = (x+i) - 2iですので,(1+i)(x-i)も割り切ることが分かります.ところが(x-i)(x+i)複素共役ですので,(1-i)(x-i)を割り切ることになります.このことから(x-i)は二つの因子(1+i),(1-i)を持つことが分かりました.ゆえに(x-i)2で割り切れることになりますが虚部を考慮するとそれはあり得ません.背理法から(x+i)(1+i)で割り切れないことが分かりました.(1-i)の因子を持たないことも同様に示せます.

 

さて問題の方程式に戻るとx^2 + 1 = y^nですが(x+i)(x-i) = y^nとなります.今(x+i)(x-i)ガウス整数の世界で互いに素なので,(x+i),(x-i)はそれぞれyの因子のn乗をそのまま持つことになります.従ってある整数a,bを用いて

(x+i) = (a+ bi)^n,もしくは(x+i) = i ( a+ bi)^n,(x+i) = - (a+ bi)^n,(x+i) = -i(a+bi)^nと書けることが分かりました.

 

話を分かりやすくするために,この記事ではn=3としましょう.一般のnについては後日改めて投稿する予定です.(x+i) = (a+ bi)^3の可能性を初めに考察していきましょう.両辺の虚部を比較すると1 = 3a^2b - b^3= b(3a^2 - b^2) が言えます.まずここからb = 1もしくはb = -1でなければならないことが従います.そのときそれぞれ3a^2 - 1 = 1もしくは3a^2-1 = -1が成立し,ここから可能性としてa = 0 , b = -1,すなわちx = 0,y = 1が導けます.

 

残りの可能性も同様に考察することができ,いずれの場合もx = 0,y = 1のみが解であることを示します.よって方程式x^2 + 1 = y^3には唯一の解(x,y) = (0,1)のみが存在することが言えました.