今回の目標は次の定理になります.
定理:を3で割って1余る素数とする.このとき整数のうち等式を成立させるものが存在する.
例:
証明
を3で割って1余る素数とします..による剰余を考えると,そこには原始根が存在します.(原始根の意味や存在の証明については様々な場所で解説がなされているので省略します.)さての以外の個の剰余を次の三つのグループに分けましょう.
グループA: 原始根で表示したときそのべき指数がで割れるもの.
グループB: 原始根で表示したときそのべき指数がで割って余るもの
グループC:原始根で表示したときそのべき指数がで割って余るもの
例えばとして考えてみましょう.原始根の一つはなので
となり
グループA:
グループB:
グループC:
となります.
グループA,B,Cの間には次のような関係があります.
補題1:ならば
それぞれの積について
となる.証明は原始根表示に戻ればすぐなので省略します.
さて,次のような自然数係数の行列を作ります.
第一行第一列の要素は「Aの数のうちすると再びAに属するもの」の個数(これをと表わします.)
第一行第二列の要素は「Aの数のうちするとBに属するもの」の個数(これをと表わします.)
第二行第一列の要素は「Bの数のうちするとAに属するもの」の個数
などとします.
再度で考えてみましょう.は「Aの数のうちすると再びA]に属するもの」の個数でした.グループAはのみで構成されているためこれは存在しない,つまりであることになります.同様にはグループAが,グループBがであるためこれも存在しない,つまりであることになります.これを繰り返すと次の行列が得られます.
この行列に名前を付けておきましょう.これをここでは「ガウステーブル」と言うことにします.ガウスがその論文の中で使ったことに由来します.この行列には次のような性質があります.
補題2:ガウステーブルは対称行列である.
実際,剰余はグループAに属するので,
となりなどとなります.
補題3:が成り立つ.
実際,補題1からの関係があり,左辺のカッコの中から右辺へ,右辺から左辺の括弧の中へ自由に移行できるので,が言え,同様になどが言えます.
補題2,3を用いるとガウステーブルの自由な元の数は4個であることが分かり,以下の通りとなります.
まだ続きます.長いですが頑張りましょう.
補題4:の三式が成り立つ.
証明:であるから第一行の総和はグループAに含まれる剰余の個数より少ない.(にを足すとになりグループA,B,Cのいずれにも属さないため.)グループAの剰余の総数はなので,
第二行の総和をとることでも言える.は二つの式を引き算すればよい.
補題5:
証明:の解の個数を二通りに評価する.
のときこれをで割ると
となりであるからのときの解の個数は
のとき,のときも同様に考えて合同式の解の個数は
*1
のとき.これをで割ると
となりであるから
のときの解の個数は
のとき,のときも同様に考えて合同式の解の個数は
この両者は等しいので
いよいよ目的であった定理を証明しましょう.
定理:を3で割って1余る素数とする..このとき整数が存在してが成り立つ.
証明:補題5から.補題4からこれを代入して
より
ここでとすると,(はグループAの数と言う意味ではない)
を用いれば,
両辺を3倍して1を足すと
から
とすれば
が言えた.
次回
box-white.hatenablog.com
*1: 8/23追記:なので,となることがあるが,このときとなり,この方程式には解が存在しない.