を奇素数とするとき,円分多項式は整数多項式として既約です.これはアイゼンシュタインの既約判定法を使って証明するのが一般的です.今日はクロネッカーによる既約性の証明を紹介します.
をの乗根とすると,円分多項式はを根に持ちます.次の補題を証明します.
補題1:を整数係数多項式とするとき,合同式
が成り立つ.ただしこの合同式は左辺と右辺の差を形式と表したとき,すべての係数がで割り切れることを意味する.
証明:整数係数多項式をとする.和を計算すると,左辺はとなる.なぜなら集合はをに置き換えても集合として不変だからである.
右辺を計算すると,指数がで割り切れない項の総和は,の性質からとなり,指数がで割り切れる項の総和は,個のの和となり,で割り切れる.従って
が成り立つ.これで補題は証明された.
さて円分多項式が二つの定数ではない整数係数多項式の積に分解されたとする.このとき
となる.は整数では素数ゆえ,のいずれか一方はのいずれかとなる.今をとなる多項式とする.は円分多項式の因子であることから,のいずれかを根に持ち,それゆえとなる.
これとであること,そして補題の合同式を考慮すると
となり矛盾である.従って円分多項式が既約であることが示された.(証明終わり)
が持つ対称性をうまく利用した証明ですね.