名前のない定理

マニアックな数学

自由研究 ヒルベルトの数論報告を読む #10

前回の記事
box-white.hatenablog.com
ヒルベルトイデアルを導入したことに触れました.

今回は次のような問題を考えたいと思います.

問題:与えられたイデアルが単項イデアルかどうか判定する方法を編み出せ.

イデアルが単項イデアルかどうかは類数の決定などにもかかわってきます.
いつでも通用する解答を見出すことはできませんでしたが,多くの場合うまくいくような方法を見つけました.

部分解答:\mathfrak{a},\mathfrak{b}イデアル,\alpha,\betaを体の整数とする.このとき関係式
\alpha \mathfrak{a} = \beta \mathfrak{b}
が成り立ち,\mathfrak{b}が単項イデアルならば\mathfrak{a}も単項イデアルである.
また,任意の整数\alpha,\beta,kについて(\alpha,\beta) = (\alpha + k\beta,\beta)が成り立つ.

具体例:\alpha = \sqrt[3]{2}とする,体の整数環は\alphaで生成される.このとき(5,2+\alpha)が単項イデアルかどうか調べる.
4+2\alpha + \alpha^2を乗じると,(5(4+2\alpha + \alpha^2) , 10)となる.これは(5)(4+2\alpha+\alpha^2,2)である.
4+2\alpha + \alpha^2 = 2(2+\alpha) + \alpha^2より,(4+2\alpha+\alpha^2 ,2) =  (\alpha^2,2)である.
\alpha^3 = 2からイデアル(\alpha^2,2)(\alpha^2)に等しい.従って(5,2+\alpha)は単項イデアルとなる.

追記:この方法がうまくいった場合,イデアルの生成元を求めることができる.今の場合(4+2\alpha + \alpha^2)(5,2+\alpha) = (2)(\alpha^2)
であることから,両辺を割ると,(5,2+\alpha) = \dfrac{2(\alpha^2)}{4+2\alpha+\alpha^2} = (\alpha^2 +1)となる.

また,この方法はいつでもうまくいくわけではない.