名前のない定理

マニアックな数学

スツルム-リウヴィル型微分方程式の応用 tan(x) = xの根について.


今日はスツルムーリウヴィル型微分方程式を応用して次のような公式を導きます.

公式
\tan(x) = xの正の根を\rho_kで表すと
\sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{\rho_{k}^4} = \dfrac{1}{350}
\sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{\rho_{k}^2} = \dfrac{1}{10}

早速証明していきましょう.

スツルムーリウヴィル型微分方程式とはp(x) > 0,q(x) ,w(x) > 0なる実数値連続関数が与えられたとき次のような微分方程式を指します.
-\dfrac{d}{dx} \left( p(x) \dfrac{dy}{dx} \right) + q(x) y = \lambda w(x) y
ここで\lambdaは未定の定数です.
考察の区間を閉区間[a,b]として,次の境界条件を考えます.
\alpha_1 y(a) + \alpha_2 y'(a) = 0
\beta_1 y(b) + \beta_2 y'(b) = 0
このとき
(i)微分方程式境界条件を満たす解を持つような定数\lambdaは離散的で最小値を持つ.それを固有値といい,その解を固有関数という.

(ii)それぞれの固有値に対する固有関数は定数倍を除いて一意に定まる.

(iii)固有関数は境界条件を満たす連続関数のヒルベルト空間において直交基底をなす.ただし内積
( f(x),g(x) ) = \int_{a}^{b} f(x)g(x)w(x) dxで与えられる.(見にくい記号ですがはてなブログでは「やまかっこ」が不安定なのでこうしてます.)

これらを既知として証明を進めます.

\tan(x) = xの根の定理を得るためにはp(x) = 1,q(x) = 0,w(x) = 1とし,区間[0,1],境界条件
y(0) = 0,y'(1)-y(1) = 0
とします.最初にヒルベルト空間の基底,すなわち固有関数を求めて行きます.
このとき微分方程式
\dfrac{d^2 y}{dx^2} + \lambda y = 0
となります.
\lambda < 0とすると,境界条件を満たす固有関数は存在しません.
\lambda = 0のとき,y=xを持ちます.
\lambda > 0のとき,y = \sin(\lambda x)となり,境界条件から\tan(\lambda ) = \lambdaが成り立ちます.
そこで固有関数はy = x\tan(x) = xn番目の正の解を\rho_nとしてy = \sin(\rho_n x)となります.

スツルムーリウヴィル理論より,境界条件を満たす関数はこれらの固有関数の線形和で与えられます.内積記号で書くと
f(x) = 3(f(x),x) + \sum_{\rho} \dfrac{2}{(\sin(\rho_n))^2}(f(x),\sin(\rho_n x)) \sin(\rho_n x)
となります.ここで\int_{0}^{1} x^2 = \dfrac{1}{3},\int_{0}^{1} \sin^2(\rho_n x)= \dfrac{ \sin^2(\rho_n x)}{2}であることを用いました.

この公式にf(x) = x^5-2x^3を代入します.\int_{0}^{1} x^3 \sin(\rho_n x) dx = \dfrac{2 \sin(\rho_n)}{\rho_n^2}であること,\int_{0}^{1} x^5 \sin(\rho_n x) dx = \dfrac{4 \sin(\rho_n)}{\rho_n^2} - \dfrac{40 \sin(\rho_n)}{\rho_n^4}であることを用いると,
x^5-2x^3 = -\dfrac{27}{35}x + \sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{-80 \sin(\rho_k x)}{\rho^4 \sin (\rho_k)}となり,x=1を代入することで
\sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{\rho_k^4} = \dfrac{1}{350}となります.

さらに上の式において\rho_k > kであることと,\sin(\rho_k) = \dfrac{\rho_k^2}{1+\rho_k^2}であるからkが大きくなると\sin(\rho_k)はほぼ1と考えてよいこと,\sin(\rho_k x)の絶対値は1を超えないことから項別微分が可能です.
項別微分を二回行うと,
20x^3-12x = \sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{80 \sin(\rho_k x)}{\rho^2 \sin(\rho_k)}となり,x=1の極限を取ると,
\sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{\rho_k^2} = \dfrac{1}{10}となります.

次の記事でより\tan(x) = xの一般的な公式を導く方法を考察していきたいと思います.

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