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での正の根の無限級数を求めました.ここでは別角度から問題に迫ってみましょう.アダマールの因数分解定理を既知とします.
まず,次の二つの補題を証明します.
補題1
複素変数の方程式の解は実軸の上にしかない.
証明:を指数関数を用いて表現しなおす.
分母を払ってを乗じ,変形していくことで
となる.
とし,両辺の絶対値を取る.と置く.は実数である.すると
となる.絶対値を取る前の等式から
となる.この二つの方程式をそれぞれ二乗し,足し合わせる.より,
となる.以前得られたの等式から
が言える.これを式変形し,因数分解すると
となる.は元の方程式の解ではないので,もし解があるならであること,すなわち解は実軸の上にしかないことが分かった.(証明終わり)
補題2
整関数は位数の奇関数である.
証明:
である.よって位数は
であり,を考えることでであることが分かる.(証明終わり)
これら二つの補題とアダマールの因数分解定理を用いて,は次のように因数分解できます.
ここでが奇関数なのでがわかり,のテイラー展開を考えることで
とわかります.
のテイラー展開は
で始まるので
が言えました.
テイラー展開の高次の項まで見ることでの値も計算できます.テイラー展開の 次の項をと表すと
などからなども計算でき,その結果は以前の結果と一致します.